0人が本棚に入れています
本棚に追加
その村には、人間が一人もいなかった。いや、見えなかったと言うのが正解か。
「鬼が出たぞー!!」
どこかで声がした。
続いて悲鳴が聞こえ、オレから離れるように足跡ができていった。
「食いもんはねぇのか!」
そう言って蹴りあげたのは人間の住居らしき建物の扉。
中の竃には、色の付いた水がかけられていた。
茶色く、泥のように濁っていた。
「こりゃあ食いもんじゃねぇな」
そこを出て他の住居も見てまわったが、食料は無かった。
(牛や豚どころか、鶏すらいねぇなぁ)
幸い、近くの川には魚が数匹いて、それを食べた。
(最後の手段としても人間は食っちゃだめなんだよな)
というのも、鬼の世界では有名な話があった。
“ニンゲンカイニデヨウトモ、ヒトハクウベカラズ、フレルベカラズ”
他には、
“オニハニンゲンヲアイスベカラズ”
というのもあったが、アイスということがどういうことかまでは分からなかった。
(昔、人間を食った大将は死んじまったらしいし、食うのは止めとくか)
鬼は硬い皮膚で覆われていたが、内側からやられるとダメらしい。
最初のコメントを投稿しよう!