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2-1    1 分割 「帰るごあいさつなのに、わたしたちが行かなくてよかったのかなあ」  セリューナはアルスの部下であるレイリューン・ランザに声をかけた。  相手は退屈をまぎらわすために、小さく化けた水飛竜とカードで遊んでいた。 「聞いてるのっ」 「ああっ、今いいところなんですよ、邪魔しないでください」 『無駄だな、もう負けは見えている』  水飛竜の、どこか不思議な響きを持つ声がした。  鋭く尖った爪を持っているため、薄いものはうまく掴めないのだが、一度見たものは記憶しているらしく、手札はテーブルの上に伏せ、指示だけを出して勝負をすすめている。 「ずっと幽閉されてたのに運がいいわね」 『ランザの読みが甘いだけだ』 「わー、ものすごく意外。レインさんって相手の一歩も二歩も先を読みそうな人なのに」  ひょいと何気なく覗いてみると、勝てそうな札が何枚か残っていた。
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