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2-2
「出さないの、これ」
「ええ、まあ」
「ふーん、そっか」
水飛竜に楽しんでもらうため、時々わざと負けていたらしい。
それはアルスのそばにいて彼を支えるために身につけた気配りなのだろう。
「あたしはレインさんが大好きだー」
心底いやそうな顔がかえされた。
「それ、いい加減にやめてください」
扉がひらいた。同時に、なぜか水飛竜がばたばたとテーブルの上をかきまわし、ぶつかりそうになりながらも器用に窓をあけ、逃げるように飛んでいく。
「あ、待ってっ」
「どうした」
戻ってきたのはアルスだった。
「水飛竜が出て行っちゃったの」
アルスが、冷たく吹きつける風でさらに散らかってゆくテーブルを凝視する。
レイリューンがすぐに窓を閉め、戻ってきた長に軽く頭をさげた。
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