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任務の終わりは師走のある日
あれは珍しく寒い夜だった。
「お?やっぱり今日は冷え込むのか」
ある場所へ向かおうと外へ出てみると、口からは白い息が出て、首元にストールを巻き、サングラスを掛けたブロンド髪の青年・兼城 洋一は、目を丸くして驚きの言葉を零す。
ふと、何かに気付き、洋一は周囲を見渡すと、赤髪で自分よりも背が低く、じーっと此方を鳶色の目で見据える相棒・相模 守政と目が合った。
「これからミッションに行くってのに、アンタ、集中しなくて大丈夫かよ?」
「ミッション前だからこそ、ちょっと緊張をほぐさないと変に疲れちまうだろ?こういうのも偶には呟きたくなるさ」
「ふぅん。
アンタも珍しいコト考えてんのな」
「おい。今日はやけに冷静だな」
「気のせいじゃねぇーの?」
守政が洋一よりも先に歩き出し、洋一は彼の背中を追いかけるように早歩きし、直ぐに隣に並んで彼の顔を見た。
至って無表情。ただ真っ直ぐに前だけを見て歩いている。
珍しいのはお前の方だろ。
いや、2年前の人物達が関わっているから仕方ないのか。俺だけが、過去の現場がどんな状況だったのか知らないから、アイツの心境がどんなのかわからないせいだからそう感じるのか。
洋一は募る疑問を抱いて俯き歩いていると、隣で歩く守政は洋一をちらりと一瞥し、再び正面を見据えて進める歩を止めず、ふぅっと息を吐いた。
「何考えてんだよ?疲れたくないって言ってたのによ」
「いや、お前がそうさせたからだろ?」
「あ?俺のせい?」
守政が片眉を吊り上げて此方を睨みつけてきた。
これは下手したらマズイ。
「あー悪い悪い。俺が悪かったから、ほら早く行こうって。さっさと終わらせてしまうんだろ?」
「そりゃそうだけどよ……」
「じゃあ、待たせたらヤバイから行こう」
「お、オイ!待てよ、兼城!」
よし、上手く回避出来た。
洋一は心中でガッツポーズを取ると、足早に森泉達Re:setメンバーが待つ現場へと向かった。
【new chapter “Case of ISRUGI”start】
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