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「そう言うお前だって、そのトレーニングウェアの中に着ているTシャツのデザインをどうにかしろよ」
「え?このTシャツか?
ハハハッ!イカしてるだろ~?」
富士は、豪快かつ上機嫌に笑ってトレーニングウェアを漢らしく脱ぎ払い、腰に両手を当てて胸を張り、中に着ていたTシャツを堂々と見せた。
洋一は、引き攣った顔をしてそのTシャツを見つめ、額に冷や汗を浮かべた。
ワインレッドにも見えるような濃いピンク色の無地に、だいたい真ん中辺りで、縦一直線に『変』・『質』・『者』と、白抜きの文字がプリントされている。
その文字が、何とも言えないくらい大きさで、明らかに「自分は変質者です。」と、主張するような程の恥ずかしさだ。
しかも、その恥ずかしさは周囲にいる洋一にも感じさせ、精神的ダメージを与えてくるくらいの攻撃力を兼ね備えている。
「お前こそさ……。彼女が出来にくいモン持ってねぇか?その自作Tシャツのデザインのセンス、あんま女子ウケしねぇよ」
「そうか?
けどよ。コレ、アニメ・漫画専攻のヤツらにはウケてんだぜ?「勇者だ!」ってな」
「おいおい……」
──そっち系統にウケてたら、ファッションに力を入れてる今時の女子達に、ますます引かれちまうだろ、お前?!
洋一が、完全にドン引きして心中で呟く。
そんな中、富士はまた豪快に笑い出し、右手首に付けているG-SHOCKの表示を見た。
今の時刻は、午前10時43分を回っている。
「それよりなんだけどよ。洋一、そろそろアニメ・漫画専攻ンとこに行った方がいいぜ?
もうすぐで、一つ目の講習終了のチャイムが鳴るぞ~」
「げっ?!もうそんな時間かよ!?
じゃ、俺、そっちに行ってくるわ」
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