動き出す『者』と、“浮上《あ》”がり出した『モノ』

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  「だから俺、あれ以来その人に少し興味が湧いちまって……。お前の情報に、あんま頼ってばかりじゃいられねぇと思ってさ、ちょっとだけ調べてきたんだ。  料理が意外と得意で、結構本格的に作っていたりとか、身体能力がスタントマンレベルなんだとか」 「身体能力がスタントマンレベルって、オマ、よく調べたなぁ!」 「ソレ、あたしも初耳。  こんな情報を知ってなかったなんて、FLAREの第一号のファンとしてまだまだ未熟だったなー」  恵分と翌桧が、とても感心して洋一の話を聞いている。  どうにか切り抜けた。  洋一は少し安堵して、心中で溜め息を深く吐き出すと、アニメ・漫画専攻科のフロア内を再び見回して、ふと、疑問を浮かべた。  アニメ・漫画専攻科のフロアは、講習の合間の休憩時間に、いつも喧しいくらいの「ww」やら、生徒各自が思い思いに打ち込んだ感想の弾幕が飛び交っている。  それは、近年の俊英大学の名物の光景となっており、ソレ見たさに他の専攻の生徒が見物に来る程の面白いもので、ある種のパフォーマンスと化している。  なのに、今日は薄気味悪いくらいに、その弾幕が全く飛び交っておらず、とても物静かな空気が漂っていた。 「なぁ、恵分。今日、お前の学科って休みだったのか?」 「ンあ?オマ、休みだったらまず、オレが此処に居ねぇだろーが?」  洋一の質問に、恵分が、少し訝しみながら洋一を見据えて問い返す。 「だよな。  けど、今日はやけに物静かじゃねぇ?弾幕が見当たらねぇし」 「見当たらないって、ソレ、いっつも飛んでる筈じゃん?洋一の見間違いじゃない?」  辺りを見回しながら頭を掻いて言う洋一に、訝しむ恵分の隣にいる翌桧が不思議そうに首を傾げ、洋一と同様に辺りを見回した。  確かに、いつものアニメ・漫画専攻科名物の弾幕が、何一つ見当たらない。 「恵分ちゃん。何か今日、あまりにも静か過ぎな気がするんだけど」  
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