任務の終わりは師走のある日

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   あれから時は()ち、電源が落ちた薄暗(ほのぐら)く広い室内。  其処(そこ)の壁には、所々銃弾が跳ね返った跡が生々しく残り、先程まで銃撃戦が繰り広げられていた事を物語っている。  その室内の中心。  大きな窓から差し込む東京の目映(まばゆ)いネオンの光が、洋一の顔を照らしていた。  その洋一の顔は、困惑と悲痛が混ぜ重なる複雑なものだった。  洋一は、一人の男の腹の上で馬乗りになりながら、右手に握り締めていたマグナムの銃口を、その男の顔に向けた。  ネオンの光に照らされた彼の顔は、今の季節を感じさせる程に酷く冷たく、とても落ち着いている。 「あんな、金と権力で、全てを支配しようとするハートの小さいジイさんと組むだなんて、正義でも誇りでもない。  それくらい、(わか)っているでしょう?陸斗(りくと)さん」 「だから何だ?」  複雑な表情で見つめてくる洋一に、陸斗が、平然とした表情で淡々と答える。 「こんなの、警察としての(つと)めを誇りにするあなたじゃないですよ!」 「俺は俺のやり方に従ったまでだ。貴様に言われる筋合(すじあ)いは無い。それ以外に何がある?」  この答えに、洋一は悲痛な目をして陸斗を見つめると、手にしていたマグナムに銃弾を()め、再び彼に銃口を向けた。  カチャ……ッ 『兼城(かねしろ)。アンタ、何してんだよ……?馬鹿な事は止めろよ!』  インカム越しに聴こえる、焦りを(にじ)ませ、静止を求める守政の声音(こわね)。 「悪いな、守政さん。俺、どうしても陸斗さんの言動が許せないんだ」  守政にそう告げて、洋一は、息を吐き出して陸斗を見据(みす)えると、トリガーに掛けていた指に力を篭めた。  彼が死を覚悟し、ゆっくりと瞳を閉じる。 『やめろ、兼城……。  ヤメロォォォオ!!』  ──ズギャアァァン……ッ!  ──この事件が起こったキッカケ。  それは、今から2ヶ月前まで(さかのぼ)る。  
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