動き出す『者』と、“浮上《あ》”がり出した『モノ』

2/21
前へ
/224ページ
次へ
   ピピッ……、ピピッ……  目覚まし時計が鳴り響く、早朝の午前7時。 「ん~……、あともう少しだけ……」  眠っていた洋一は、もぞもぞと布団の中で身体を動かし、其処(そこ)から伸ばした右手で、鳴り響く目覚まし時計のアラームを止めると、再び布団の中にその手を戻した。 「う~ん……」  そして、洋一が再び幸せそうに眠り出した。その刹那、  バタァンッ!! 「おはようごぜぇます。兼城(かねしろ) 洋一くん」  守政が豪快に洋一の部屋のドアを開け放ち、仁王立ちに拡声器を持った出で立ちで、洋一がいるベッドを見た。  起きる気配が全く無い。  守政は片眉を吊り上げると、スタスタとベッドへと向かう。 「寝てんな?」  そして、耳を澄ませて無表情で軽く頷くと、そのまま布団に潜っている洋一の腹部目掛けてエルボーを噛ました。  ドスッ! 「だぐはァッ!」  強烈なエルボーに、洋一が布団を跳ね退()けて飛び起きると、守政は素早く洋一から離れて、無表情のまま洋一の顔を見つめた。 「バディとして、アンタを起こしに来てやったぜ」 「何処(どこ)に、攻撃噛まして起こすバディがいるか!」 「此処(ここ)にいンだろ?俺が」  何気なさそうに答える守政に、洋一は少し苛立(いらだ)つと、ベッドから降りて彼に近付き、左手で右頬を(つま)んで引っ張り上げた。 「お前、一昨日(おとつい)、俺が疑ってた事に相当恨みでもあるんだろ?」 「うひゃんへねぇよ。ハカじゃねぇの?…」  彼が半目になって受け答え、自分の頬を摘み上げる洋一の手を強く叩くと、ヒリヒリと痛む頬を(さす)りながら言い出した。  
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

58人が本棚に入れています
本棚に追加