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その様はまるで、自分に良い弟子が出来た師匠のようだ。
「いや、まずは、その人のセンスからの問題だろ。そう簡単に出来るようなもんじゃないし」
「諦め早ェな。俺のバディなら、諦めずにやってみろよ」
「(強要すんなよ)」
洋一の反論に、彼が、駄目だと言わんばかりに首を横に振って言うと、洋一は呆れた顔をして、フレンチトーストを食べながら心中で呟いた。
『続いてのニュースです』
女性アナウンサーの高く澄んだ声が、テレビのスピーカーから流れ、洋一も守政と同様にそれの画面を見る。
それには、昼間に撮影したのであろう、秋晴れの青々とした空にとても栄える、純白で大きく、とても立派な景観の病院が映っていた。
『昨日の10月27日、午前2時頃、この病院にて発生した医療ミスにより、一名の女性が亡くなった事が判明いたしました』
「ハァ?ちょっ、医療ミスとかマジないし。
俺、この病院絶対ェ行かねぇ。怪我しても行かねぇ!」
「お前、なんか我が儘だよな」
テレビのニュースを見つめながら率直な感想を述べる相模に、洋一は、半ば呆れ顔をしてフレンチトースト食べてから言う。
すると、彼は洋一の方へ素早く振り向くと、不満ありげに整った柳眉を吊り上げて声を出した。
「ハァア!?アンタ、馬鹿じゃねぇの?この病院は、医療ミスで患者一人を殺したんだぜ?
そんな病院に、自分のたった一つの命を預けらンねぇだろーが!」
「だけどよ。もし、自分の命に関わる程の大怪我を負っちまった時、近くにその病院しか無かったらどうすんだよ?」
不満を垂らす彼に、洋一は少し面倒臭さそうに問い掛けて、リンゴジュースを一口飲む。
これに彼は更に不満を露にし、洋一からテレビに視線を移して、ぶっきらぼうにフレンチトーストを食い千切った。
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