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週に二日の休日の正午過ぎ、起き抜けに聞こえてきたのは、長いあいだ空室だった隣に、荷物が搬入される音だった。 (引越しか……。) まあ、春先はシーズンなのだし、ここは独り向けのマンションだ、そう珍しいことでもないだろう。 くあ、と一つ、欠伸をして、冷蔵庫へと手をかけた。 スーパーの惣菜とビールしか入っていない箱にしかめっ面をしてしまう。 仕方ないので、氷を入れたコップに水道水を注いで、一気に飲み干した。 ほのかにかおる塩素の臭いに、妙な不快感が込上げる。 未だ覚束無い足取りで部屋へと戻り、とりあえず着替えて顔を洗った直後だった。 軽快なインターホンの音が聞こえて、客人の存在を告げる。 (…隣に越してきた人かな。) 「はあーい。」 今行きますよー、と言いながら、玄関に手をかけた。 女子大生とかならテンション上がるんだけどなあ。 「こんにちは。突然来訪して申し訳ありません。」 扉の前に立っていたのは、思い描いたような女子大生ではなかった。 残念ながら男性である来客は、手に何かお土産を持っていたので、隣人で間違いないだろう。 ビー玉のような瞳でふんわり微笑む彼はまるで犬のように人懐こい顔立ちをしていた。 それから、件の隣人と親しくなるのに、さしたる時間は要さなかった。 1.
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