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「ほい、匠くんの注文。」 再び現れた店主が、俺の前に日本酒の入ったグラスと唐揚げを置いた。 「日本酒?浅倉さんてば、渋いね。」 しげしげとグラスを見つめて、真宮が言う。 好きなんだよ、と答えて、ぐい、と日本酒を呷った。 ほう、と息をついて、唐揚げに箸をのばす。 咀嚼も少なめに飲み込んで、流し込むように酒を飲んだ。 「俺特製の唐揚げなんだから、味わってよねー。」 「作ったの巡くんじゃん。」 「プロデュースしたのは俺だもん。」 「そういや、末本、顔出さないね。忙しいの?」 「いやー?今はそんなに忙しくないんだけどねえ…休憩でもしてるんじゃない?」 なあに匠くんってば、巡目当てなのー?なんて、おネエ口調でにやにやしながら言う店主は、とてつもなくイラつく。 「男目当てって…俺は女の子にしか興味ねーの。」 「へえ、そうなの?でも匠くん、その手の人に結構人気よ?ねー、イチちゃん。」 「…俺、しーらない。浅倉さん、あんな馬鹿ほっといて、飲もう。」 馬鹿っていうなよう、と喚く店主を華麗なまでに無視して、真宮が酒を呷る。 真宮の名前は「はじめ」だけれど、漢字から、イチというあだ名で呼ばれているらしい。 「お前ら、本当、仲いいんだか悪いんだか、分かんねえなあ。」 笑いながら言えば、仲良くないよ、という声と、仲良しだよ、と主張する声が重なって聞こえて、大笑いしてしまう。 俺がげらげらと笑えば、真宮は顔を赤くして、小さく、笑うなよう、と呻いた。 なんとも、弟のような真宮が愛らしくて、ポンポンと頭を撫でれば、真宮は不服そうに、俺から目をそらした。
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