Valentine for you

捨てちゃうの？

「……11時。」

食卓に並べられている２つの食器。

何度待っている間、シチューの火をつけたり消したりしただろう。

(あと１時間でバレンタイン、終わっちゃうじゃん。)

持っているチョコレートが入っている箱をぎゅっと握る。

１人で座る食卓は、すごく、寂しい。

あたしの旦那さまは、それなりに有名な芸能人だ。

今じゃ日本だけでなく、ここアメリカでも活躍している俳優さんなのだ。

忙しいのは十分わかってる。

今日だって、昨日から泊まり込みで地方にて撮影してるんだから。

わかってる。わかってるんだけど……、

(バレンタインぐらい、帰ってきてくれても……)

「あー、もう！」

そんな考えを吹き飛ばすように、あたしはため息をついた。