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撮影が終わり、ニューヨーク市内に入ったのは11時過ぎだった。
「なるべく急いでくれ。」
「これ以上出したら捕まりますって。」
もう何度目かのやりとりにため息が出る。
わかってるのだ。これが最高速度なことぐらい。
「爽さんって、見かけによらず奥さんのこと溺愛してますよね。」
「見かけによらずってなんだよ。」
「だって見た目、女遊び酷そうですもん。」
「…。」
「あ。すいません。」
少し焦ったように謝る運転手兼マネージャー。
おそらく、バックミラーで見えた俺の顔が恐ろしいことになってたんだろう。
「俺は。ずっとあいつしか見てなかったよ。」
「え?」
「俺は、見かけ以上の一途なんだよ。」
そう言って、バックミラー越しに目を合わせると、そうですか、と少し笑った。
「奥さん、幸せものですね。」
「……あたりめーだろ。」
からかうような視線に、俺はふいっと顔をそむけた。
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