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こーたくんに次から次へとシャツ、スラックス、ジャケットと手渡され急かされながら着替え終え、最後に適当に髪を弄って眼鏡を装着。
鏡に向かって一人でドヤ顔をしてみる。
ん、満足。
「ど?」
鏡からこーたくんに視線を移し、尋ねてみるが惚けたように俺を見つめてるだけで反応がない。
「こーたくーん?」
どこかに意識がとんでるらしい彼の顔の前で手をフリフリ振っていたら、ようやく意識が戻ってきた。
次の瞬間、動くスピードにビックリした。
素早く自分の胸の前で握りこぶしを作ったかと思うと、ズズイッと俺に詰め寄ってきて口をパクパク動かし、何かを伝えようと必死になっている。
その様子はまるでワンコだ。
見えるはずのない尻尾がちぎれそうな勢いでブンブンしている。
「ま、まっ、まといしゃっ!!!おにゃっ……ぁうっ、にあってまふ」
「ふふふ、こーたくん落ち付いて」
ホント、この子は見てて飽きないなぁ。
別に体は小さいって訳じゃないのに小動物を連想しちゃう。
“小動物”
それがフと、亜弥を思い起こさせ気付いたときにはこーたくんの茶色い髪の毛にくしゃっと触れていた。
ビクッと跳ねるように揺れる頭。
一気に現実に戻され、ごめん、と手を引いた。
触れてから気付いた違い。
あの子は真っ黒な黒髪でぴょんぴょん跳ねた癖っ毛。一回会ったキリだが覚えている頭の位置にしたって、似ても似つかないというのに……。
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