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ガッタァァァッン!!
ニギニギ動かしながら自分の掌を見つめていると、突如響いた凄まじい音。
ビックリしてその音源を探せば、床にしりもちをつき、俯くこーたくんとその傍らには倒れた椅子。
チラリと見えた髪の隙間から覗く顔はものすごく真っ赤だった。
「ぁ……えと、凄い音、スミマセ……」
「そんな事より!こーたくんは大丈――」
「こーた、大丈夫か?」
差し出そうとした俺の手よりも先に、横から伸びてきた手がこーたくんの腕を掴んで立たせる。
「うおっ!シゲ……へへへ、大丈夫。ありがとう」
「ん」
柔らかく笑う茂希くんは、ポンポンッとこーたくんの頭を数回叩いて、子供扱いすんなっと手加減無しに払われている。
そんなやり取りをボーっと眺めていると、蘭夏くんが近くにやってきた。
その表情はいつもの微笑みとは打って変わって、とても冷たい。
「高屋敷さん」
「何かな?」
後ろの二人には聞こえないようにか、ぐいっと顔を近付け喋る蘭夏くん。
お互いの顔の距離は僅か数センチ。
じっくり観察するように蘭夏くんの顔を眺め、整った顔だなー。うっわ、まつ毛なげっ!とか場違いな事を考えながらも、話は聞く。
「あなたにその気が無いのなら、こーたを期待させるような事はしないでください」
「は……?」
「あの子が可哀想だ」
それだけ言うと、俺に反論の余地も与えずじゃれている二人の元へ行ってしまう。
俺はその背中をポカーンと見送るしかできなかった。
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