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「制服見ただけで三人の役柄大体把握できるねこれ」
「ですよね。どうかまとい先生と一杯絡みがありますように!」
「アハハッ、楽しみだね」
ぐぬぬっと熱心に念を飛ばすこーたくんを笑いながら眺めていると、鏡に映った出入口の扉が開くのが目に入った。
そこからスルリと入ってくる愁。
キョロキョロ室内を見回すと、こっちに気付いたのか周りの役者さんやスタイリストさんに挨拶しつつ、どんどん近づいてきた。
「お迎えが来たみたい」
「今日はまだこれからお仕事ですか?」
「そうなの」
やんなっちゃうよねーと愚痴れば何も言わずただ苦笑いをされた。
……なんて大人な対応だ。
「お前はもっと仕事がある事に感謝しろ」
「いっ!」
こーたくんの反応に感心していると、後ろから愁お馴染みのため息と共に手に持っていた資料を丸めたやつで頭をスパーッンと殴られた。
結構いい音が周りに響いたせいかかなり注目されてしまったじゃないか。愁のアホ。
「ふん……大袈裟なやつ」
「いやいやいやっ今のはホントに痛かったって」
ほらここ、ボコってなってる!と頭を突き出してアピールすれば、はいはい。と特に確認しようとせず、軽く流された。
ここがもし人がたくさんいる場所じゃなければ、今ごろ部屋の隅で膝を抱えていじけてるぞ。
「……おもしろいくらい考えてる事が駄々洩れだな。っとそろそろ時間だ。まとい、行けるか」
「うーい、行けますよー…」
「しゃきっとしろ!ほらっ行くぞ」
背中をおもいっきり叩かれ、嫌でも背筋がピンと伸びる。
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