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「容赦ないなー…もぅ。じゃ、三人共またね」
ヒリヒリする背中をさすりながら、俺と愁のやり取りを見ていた三人へ手を振る。
「はい、お疲れ様でした」
「お仕事頑張ってください!」
軽く会釈する蘭夏くんにならってこーたくんもガバッと頭を下げる。
それはビックリする程綺麗な九十度の礼だった。
けれども、勢いが有りすぎたせいでパーカーのフードが頭にかぶさりかなり間抜けな状態になってしまっていた。
我慢できずにプッと吹き出す。
「ふ、ハハハッ――豪快だなぁ」
「~~っ、恥ずかしぃぃ」
九十度に体を折った状態のまま、顔を隠したいのか、ギュッとフードを掴み目元まで隠すくらい目深にかぶっていく。
そのままでも別に構わないのに、蘭夏くんが優しく諭しにかかる。
「こーた、顔上げな?」
「う~~……」
蘭夏くんには逆らえないのか、渋りながらもおずおず上がっていく頭。
それを苦笑しながら見守り、完璧に頭があがった時、ついその可愛さに笑ってしまった。
未だにかぶったままのフード姿は、まるでてるてる坊主だ。
「かーわいいなぁ……」
「!!」
自分でも無意識のうちに目元をくしゃっと緩めるようにして笑っていた。
数十秒間、ニコニコ笑う俺と目を大きく見開いたこーたくんの二人で、特に言葉もなくただお互いに見つめ合うという不思議な図。
それを現実に引き戻したのは、愁の俺を呼ぶ声で、奴は数歩先を歩きだしていた。
「まとい、早くこい行くぞ」
「はいはい今行く!じゃ、残りのお仕事も頑張ってきます」
「は……い」
惚けたようなこーたくんに笑顔をおくり、蘭夏くんと茂希くんには睨まれながら、既に部屋を出ようとしていた愁の後を追った。
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