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コツコツコツ………愁と俺、二人分の足音が誰もいない廊下に反響する。
「……おい」
「ん?なに」
「こーたさんへの接し方、あれは……」
「何さ、はっきりしねーな」
言葉を詰まらせる愁を珍しがってニヤニヤしていると、それに反して真面目な声音で俺を呼ぶもんだから、ぐっと押し黙る。
「――…お前、こーたさんのこと、どう思ってんだ」
「こーたくんの……こと?」
真面目な顔して、何を言いだすかと思えば。拍子抜けしてしまったじゃないか。
「おいー、ビックリさせんなよ。何かやらかしたかって焦ったじゃん」
「いいから、どう思ってんだよ」
どうやら愁にとっては真面目な話らしい。
俺だけ笑っていたのが場違いな雰囲気にバツが悪く、視線を宙へさ迷わせる。
いくらそうしていても愁の俺を見つめる視線は許してくれそうになかった。
「……可愛いな、と思ってるよ。弟みたいで甘やかしたくなる。前のドラマの影響だわ、これ」
「それだけか?」
「?それ以外、なにも無いけど」
はてなを浮かべる愁以上に、俺の方がより多くはてなを浮かべてしまう。
愁が何を言いたいのかわからない。
それがわかったのか、ハァー…と盛大にため息をつかれた。
「な、んだよ」
「お前は天然たらしか」
「どうしてそうなった」
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