-1-

3/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
(やべ...財布忘れた...) と、啓汰は心の中で舌打ちした。 講習の休憩時間に飲み物を買いに行く生徒はたくさんいる。 にも関わらず、自販機は1台しかないため、休憩時間には長蛇の列をつくってしまうのだ。 その行列を避ける為、休憩開始の声が掛かるのと同時にダッシュで並んだのだが、肝心の財布を忘れてしまったようだ。 「福田早くしろよおー」 「後ろ待ってんだけどー!!」 と後ろに並んでいる生徒達からのブーイング。 諦めよう...そう思い、列から外れようとした。 そのとき、白い手が啓汰の横から自販機に触れた。 「どれ、飲むの??」 淡いグリーンの浴衣を着た、啓汰と同い年くらいの女の子が啓汰に尋ねた。 突然の出来事に、啓汰は一瞬たじろいだが、小さく呟く。 「レ、レモンティー...」 女の子は優しく笑い、ボタンを押す。 ガコンっ...と音がして落ちたそれを、はい。と啓汰に渡した。 そしてもう一度、同じボタンを押した。 「私も、飲みたかったんだ。」 そう言ってキャップを開けた。 「あ、の、、、金」 「え??」 「と、取ってくるから...」
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!