第一幕・桜【前編】

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そして誰だったかが言い出した。 ーー人柱がいると。 人柱に決まったのは、三姉妹の二番目の私だった。 妹はまだ赤子で、姉上は縁談が決まっていた。 だから私だったのだ。 それを母上様が自ら川に身を投げて嵐を鎮めた。 つまり母上様が私のことを守ってくださったのだ。 私は母上様を奪った嵐が好かぬ。 嵐は私から大切なものを奪っていくからーー。 三日祭が終わった、義宗様が戻られた。 すぐさま床に着かれた。 かなりお疲れのようじゃ。 その晩、雨がシトシトと降りだした。 その音は微かで、まるで誰かが泣いているようじゃ。 気になって寝れなかった。 誰かに会いたくて、勝手に足が義宗様の床へと向かう。 ふすまを開けると義宗様が苦しそうにしておった。 義宗様の痛みが移ったように胸が痛み、義宗様が寝ている側に座った。 恐る恐る義宗様の額に手を当てる。 咎められるだろうか……? 不安は義宗様の熱によって消された。 なんとお熱いのだろう。 まるで夏の日差しのようじゃ。 額から汗が次々に湧き出てくる。 このままでは義宗様のお命が危ういのではないか?
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