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義宗様は目を伏せてからまたお猪口に口を付ける。
そのお姿は悲しみを耐えているようだった。
初めて聞く義宗様自身のこと。
衝撃的で頭がまだついてこない。
たしかにお義父様と義宗様はまるで似ていない。
でもまさかそんなことがあるなど思いもよらなかった。
「東雲の神子は嵐を呼ぶ。それがこの国に豊穣をもたらし栄えさせてきた。神子の血筋は代々病弱で短命だった。例に漏れず父上様もわしが五つの今日亡くなった」
空を見上げるとまた音もなく雨が降っている。
まるで、誰かが泣いているように……。
「父上様はわしと同じ金の髪と空色の眼を持つお方だった。責任感が強く優しい気質で、亡くなるその直前までこの国を案じて神子としてわしに使命を全うするようにと語られた」
惜しむように下唇を噛み締めて、空を見上げる義宗様。
そのお姿に胸が痛んだ。
「父上様と母上は元々恋仲でな、先代のご当主が勝手にご当主と母上の婚姻を決めた。だがその時にはもう母上はわしを身ごもっていたのだ。わしは体裁上はご当主と母上の子として育てられたが。誰もがわしの見てくれに母上と誰の子かわかっておった。父上様が神子ということもあり、誰も母上の不義を責めなかった」
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