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「この国は、ほんによう雨が降りまするな」
「鳴神に愛されておるからであろう?桜」
私が東雲に嫁いで早いものでみつき。
生活には慣れたがまだこの方の面妖な姿に慣れない。
金の御髪に、空色の眼。
まるで、絵物語で聞いた鬼や妖怪みたい。
恐ろしい。
この方に触れられるのだと思うと恐ろしくて堪らなかった。
雨がシトシトと降ってる。
縁側で語らうのはいつものことなのに、人二人分の距離が私は安心した。
義父上様も義母上様も何も言わないのだからこれでいいのだろう。
想像していたよりも東雲に嫁ぐことは怖いことではなかったけど、この方が私は怖い。
「雨以外の音が聞こえない気がします」
「酒を持ってきてはくれないか?一献呑まぬか?桜」
「いえ、私は先に休ませていただきます。紅(クレ)を呼んで参ります」
夫婦とは思えない会話。
私は侍女の紅を呼びに縁側を離れた。
ほんにこの国はよう雨が降る。
誰かが泣いてるみたいに。
もしかしたら鳴神様が泣いてるのやもしれぬ。
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