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「別れようか」と夏川先輩に言われた時は、驚きが隠せなかった。
付き合って三ヶ月、後数日で四ヶ月の記念日を迎える一月の終わり。
「嫌です」
何を答えるまでもなく、私の口からはそんな言葉がこぼれた。
「嫌」
彼との別れなんて考えことなかった。
喧嘩は度々していた。
元々考え方や価値観の違う私達は、多分相性がよくなかったのだと思う。
それでもいつも隣にいて、優しく手を握ってくれる夏川先輩が、私は大好きだった。
「僕には君と一緒にいる未来が見えない」
彼はそう言って席を立った。
「じゃあ、僕はこの後用事が入っているから行くね」
駅前のカフェに一人残された私は、ポタポタと涙を落として何が起こったのか理解出来ずに、しばらく窓の外を見つめていた。
「私のこと、嫌いになったのかな」
呟いてももう夏川先輩の姿はそこになく、何の返事も返ってこない。
私の心中を察したかのように、それまで晴れていた空模様が崩れ、音のない雨が降り始めた。
とても冷たい日の出来事だった。
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