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ジョワーン!という家令(ハウス・スチュワード)のタナカが持つ銅鑼の音が正面玄関前の庭に鳴り響く。
怪し気な東洋人の男と執事が対峙する中、静かに見守る使用人達と椅子に座りテーブルに肘を付く主人、シルバートレイを抱いて笑みを浮かべた侍女。
「くらえ!奥義!!花鳥風月百花繚乱拳ーーーッ!」
そう叫んだ東洋人は、ほぁたあぁぁ!と声高らかに執事へと仕掛けて行く。
執事が手袋を引き締めるのと、侍女が口元に手を添えて笑みを溢すのはほぼ同時。
「ッ‥‥がはっ‥‥‥‥!」
それは一瞬の出来事。
目にも止まらぬ執事の一撃で、怪し気な東洋人が膝を付く。
「こ、この技は我が流派秘伝の最終奥義‥‥‥!猛虎龍咆万華散裂拳‥‥‥‥」
がばっ!と振り返った東洋人には、執事の後ろ姿しか見えない。
「貴様!一体何者だ!!」
その言葉に振り返った執事の肩上までの黒髪はさらりと流れ、見下ろすのは切れ長の紅茶色の瞳。
そして、彼が着こなしているのは上質なウールで作られた漆黒の燕尾服。
「ファントムハイヴ家の執事たるもの、この程度の技が使えなくてどうします」
そう、彼こそがファントムハイヴ家執事───────セバスチャン・ミカエリス。
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