第1話 その執事、有能

3/6
前へ
/6ページ
次へ
ジョワーン!という家令(ハウス・スチュワード)のタナカが持つ銅鑼の音が正面玄関前の庭に鳴り響く。 怪し気な東洋人の男と執事が対峙する中、静かに見守る使用人達と椅子に座りテーブルに肘を付く主人、シルバートレイを抱いて笑みを浮かべた侍女。 「くらえ!奥義!!花鳥風月百花繚乱拳ーーーッ!」 そう叫んだ東洋人は、ほぁたあぁぁ!と声高らかに執事へと仕掛けて行く。 執事が手袋を引き締めるのと、侍女が口元に手を添えて笑みを溢すのはほぼ同時。 「ッ‥‥がはっ‥‥‥‥!」 それは一瞬の出来事。 目にも止まらぬ執事の一撃で、怪し気な東洋人が膝を付く。 「こ、この技は我が流派秘伝の最終奥義‥‥‥!猛虎龍咆万華散裂拳‥‥‥‥」 がばっ!と振り返った東洋人には、執事の後ろ姿しか見えない。 「貴様!一体何者だ!!」 その言葉に振り返った執事の肩上までの黒髪はさらりと流れ、見下ろすのは切れ長の紅茶色の瞳。 そして、彼が着こなしているのは上質なウールで作られた漆黒の燕尾服。 「ファントムハイヴ家の執事たるもの、この程度の技が使えなくてどうします」 そう、彼こそがファントムハイヴ家執事───────セバスチャン・ミカエリス。 .
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加