第1話 その執事、有能

4/6
前へ
/6ページ
次へ
「‥‥‥‥という訳で坊ちゃん、私が勝ちましたのでお約束通りこれから晩餐まで本日の復習と明日の予習をなさって下さいね」 『坊ちゃん』と呼ばれた少年は、頬杖を付いたまま忌々し気に舌を鳴らす。 ブルネットの髪に、青碧色の左目と眼帯に隠された右目。12歳とは思えない程、あどけなさの欠片も無い少年。 彼こそがファントムハイヴ家当主──────シエル・ファントムハイヴ伯爵。 「凄いです!セバスチャンさん!!」 「さすがワタ‥‥セバスチャンさんネ‥‥‥」 「スゲーな、ウチの執事は」 口々にセバスチャンへ称賛の言葉を贈るのは、庭師(ガードナー)のフィニアン、家女中(ハウスメイド)のメイリン、料理長(シェフ)のバルドだ。 「秘境で見付けて来られた人材でしたのに‥‥‥‥ねぇ、坊ちゃん?」 くすくすと笑みを溢すのは、群青色(ウルトラマリン)の大きな瞳に雪の様な白い肌の侍女。 烏羽色の艶やかな長い髪は、純白のリボンで高く一つに結い上げられている。 膝下までのロングブーツに、足首までを隠す漆黒の女中服は絹(シルク)で作られておりドレスのよう。 その服に合わせてフリルが多く取られた長いエプロンの紐は背で結ばれ、まるで蝶の様に風に揺れる。 彼女の名はセリーヌ・クロフォード───────ファントムハイヴ家侍女にして、執事と同等かそれ以上の実力の持ち主。 .
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加