プロローグ

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東の国に、幻想郷と呼ばれる土地がある。 科学で全てを証明してしまう現代では、ファンタジーの一言で片付けられてしまっていた“人外”達が、唯一存在を許される場所。それが幻想郷だ。 そこでは人間と、妖怪が、絶妙なバランスを保って共存している。 でもそこは、現代に住む者からみたら異常な世界で、馬鹿馬鹿しい話題ばかりで、 カラフルで騒がしい現代からみたら、非常に暢気な連中ばかりしかいないのだ。 理解できることより、理解できないことの方が多いような。だって、油断すれば人間は妖怪に喰われて、妖怪は人間に退治され、生涯を終えることもあるのだから。ごっこ遊びは所詮ごっこ遊びなのだ。 だが、しかし。 幻想郷に訪れた、現代に生きる幻想郷の外の人間──外来人は、その殆どが幻想郷に残り、外の世界のことなんて気にする事もなく、暢気な連中と暢気に生きる。 “元”外来人、橘優未(タチバナ ユウミ)もそうだ。 彼女は元々幻想郷で生きていたかのように、のびのびと今日も魔法使いと妖怪とに囲まれて幻想郷を駆ける。 きっとそれは、彼女も同じく、そんな異常で残酷なほど暢気な幻想郷を好きになってしまったからだろう。
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