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俺の前にいる“人ではない何か”は、がむしゃらに、そして俺の事など気にもせず喰っていた。
俺は今この場所が、人目もつかず、普通入ろうとは思いもしない錆びた工事現場で、現在午後0時を回った真夜中であることに心からほっとする。
それほどまでに、今のこの状況は異常であり、残酷で、惨いものだった。
しかし、安心している暇は一つもない。
俺の前にいる“こいつ”は手を止める。
血で汚れたその顔を俺へと向ける。
「あ―……」
つい、声が出てしまった。
どうする―……
どうする?
しかし、頭は中々動くことはなく、俺はただ呆然と“こいつ”と目を合わせていた。
奴が……動く。
必死に体を動かそうとするが、体は脳の指示を聞き入れることはなく、必死に動いた足と足は縺れ、俺は無様に尻餅をついた。
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