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あたしに顔を近づけ男は、ジロジロと見る。
すると、いきなりニカッと笑った。
「何をお求めでしょう?」
何?急に態度が変わった…。
そのいきなりの態度の急変に、あたしは恐怖さえ感じた。
「何をお求めでしょう?」
男はさらに言い続ける。
あたしは後ずさりしながら、店内を見回した。
「あ…あれ…」
「あれ?」
「あれ!ください」
あたしは目の止まった、クッキーを指差した。
男はクッキーの入った袋を手にとると、聞いてきた。
「これで、ございますか?」
あたしはこくこくと頷くことしかできない。
すると、男は手を前に出してきた。
え?何?お金をよこせってこと?
あたしは急いで財布を取り出し、お金を渡した。
すると、お金と引き換えにクッキーを渡してきた。
「まいどありぃ。またよろしくお願いします」
男のその声を後ろに聞きながら、急いで店を出た。
あたしは怖く感じ、逃げるように走った。
しばらく走るといつの間にか街から外に出ていた。
あたしは膝に手をつき、肩で息をしていた。
「あ~、怖かったぁ」
結局、何も聞けなかったなぁ。
もう、元の世界に戻った方がいいかな。
でも、戻ったところでつまらない毎日が待っているだけだ。
もう少し…もう少し…この世界を見てみたい。
白ウサギのことも気になるし。
そう決意すると、あたしは再び歩きだした。
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