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6月25日…その日もいつものように放課後の図書室にいた。
図書室で本を読んで帰ることは、すでに恒例となっていた。夕日が本を照らし、文字が光りに包まれる。
あたしはページを一定のリズムでめくっていく。
しだいに、眠気に襲われていった。
いつも本を読んでる時は寝たことがないし、眠くなったことなんかなかった。
いつも物語の続きにドキドキし、次のページをめくっていく。
しかし、この日だけは違っていた。
まるで、誰かがそう仕向けたんじゃないかって思いたくなる程、眠気に襲われた。
いつ寝たのかも、わからない。
気づいたら寝てた、そんな感じだった。
どのくらい寝てただろうか。
しばらくして、目を覚まし時計を見てみると30分程しか経っていない。
遠くからは車の走る音と子供の声、それとカナカナカナというひぐらしの声が誰もいない校舎に響いていた。
どこか不思議な気分になる。
いつもと同じ学校のはずなのに、まるで自分だけその世界に取り残された気分になる。
そんな不思議な感覚に少し酔いしれているとカタンと図書室の隅で物音がした。
人の気配がまったくしないところでの物音にさすがのあたしも少しびっくりした。
なんだろうと思い、その物音がする方を覗いてみると、白いかたまりみたいなのがうずくまってるように見えた。
さらに近づき、覗き込むように見てみると、ピクッとその白いなにかが動いたように思えた。
ピクピク。
やっぱり気のせいじゃない。動いてる。
それは体を起こすようにして、こっちへと体を向かせた。
長い耳、赤い目…シロウサギだ。
あたしはドキドキしていた。
アリスの物語に出てくるシロウサギと重なり、あたしは思わずウサギに向かって話しかけていた。
「ねぇ、シロウサギさん。あたしを不思議の国につれてって」
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