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こんなにも近くまで来ているのに、やっぱり二人はあたしに気づく様子はない。
やっぱり、あたしのこと見えてないんだ。
それよりも、あの少女はアリスって呼ばれてた。
確かに、面影はある…てことはこれは、アリスの過去?
じゃあ、あれがアリスのお父さんなんだ。
「お父様、今度はどんなお話を書くの?」
アリスのお父さん、小説家かなんかなのかな?
「ん?それはだな…内緒だ」
「えー、知りたいー」
「完成してからのお楽しみだ。完成したら、一番にアリスに読ませてあげるからな」
「わーい。楽しみー」
アリスはほんとによく笑う、笑顔の可愛い子だ。
それなのに…今は、あんなひどいことに…。
あたしは少し、涙が出てきた。
すると、今度は辺りが歪み違う場面になった。
あたしはあたりを見回す…。
「アリス!完成したぞ」
「え?なに?なにー?」
「ほら、新しい物語だ」
アリスの父は一冊の本をアリスに見せた。
アリスはその本を手にとった。
「不思議の国のアリス?あたしと同じ名前だぁ」
「この物語はアリスのために書いたものだよ。どうしても今日までに仕上げたかったんだ」
「今日まで?」
「今日はアリスの誕生日だろう?誕生日おめでとう」
アリスはパァっと明るい表情になった。
「お父様…覚えててくれたんだ?」
「当たり前だろ?」
アリスの父はアリスの頭を撫でた。
「この物語はアリス…お前が主人公なんだよ」
「あたしが…ありがとう。お父様」
それからというもの、アリスはその不思議の国のアリスという物語にのめり込んでいった。
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