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再び、辺りは真っ白な光に包まれた。
目を開けると、目の前には傷だらけのアリス。
あたしは自然と涙が零れてきた。
アリス…あなたはルイス・キャロルの娘だったのね。
「アリス・キャロル…」
あたしは思わず、アリスのフルネームを呟いた。
その瞬間、アリスの体がピクッと動いた気がした。
「アリス…?」
すると、アリスがゆっくりと顔を上げた。
アリスは振り絞るように声を出した。
「あ…なた…だ…れ…?」
「アリス!意識が…」
アリスの意識が戻った、いやこの場合心が戻ったと言った方がいいのかもしれない。
「あなた…は、あたし…と、同じ…だね」
アリスは傷だらけの顔でにっこりと笑った。
その表情がとても痛々しくて、あたしはまた涙を流した。
「アリス、あたしあなたを助けに来たの。今はあたしも捕まってるんだけど…」
「無…理よ。女王…には…適わない」
「そんなことない!きっと勝てるよ。きっとチェシャ猫達が助けに来てくれる」
「チェシャ…猫?」
「そうよ。あなたの飼い猫だったんでしょ」
「そう…あの子があなたと…」
「だから、きっとあなたを助ける!」
「頼も…しいわね」
アリスはフフっと笑ってみせた。
「あなたの…名前は…?」
「あたし?あたしの名前は…女王に奪われて…思い出せないんだ…でも、みんなはあたしをありすと呼んでくれる。チェシャ猫は呼んでくれないけどね…」
「ふふ…そう…なら、あたしも…あなたをありすと呼ぶわ。同じ名前ね」
アリスはまた痛々しい笑顔を見せた。
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