第1章:終わらない国へようこそ

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鏡を抜け、目を開けてみる。 そこは洞窟のようだった。 なぜか壁には大小さまざまな時計がかけられている。 美月は左右を見渡しながら進んで行くと、あることに気づいた。 その時計は、どれも同じ時間を差しているのだ。 あたしは不安を感じながらも期待を抱かずにはいられなかった。 洞窟をしばらく歩いていくと、光が見えてきた。 どうやら、出口の光らしい。 期待が膨らんでくる。 その先に何が待ってるんだろう。 わくわくが止まらない。 洞窟を抜けると、そこは森の中だった。木々の隙間からはオレンジ色の光が差し込んでいる。 しかし、あたりを見渡すが木ばかりで、どっちに迎えばいいのかわからない。 それどころか、ここがどこかなのかさえ分からない。 とりあえず、美月は適当に歩き出した。 しばらく歩いていると、木の上から声が聞こえてきた。 声がした木の上へと視線を移して行くと、美月は目を丸くするしかなかった。 驚きすぎて、声も出ない。 だって、でっかい芋虫がタバコをふかしながら、しゃべってる。 実際に見てるのに、信じられない光景だ。 「お嬢ちゃん、こんなとこでなにしとるんだ?」 あたしはびくっと体をすくませた。 やっぱりしゃべってるよ…この芋虫。 シロウサギを追いかけていたやってきた、この世界…もしかして、あたしが憧れ続けた不思議の国? 「あ、あの…あなたはいったいなんですか?」 「儂?見たらわかるじゃろ?芋虫じゃよ、芋虫」 やっぱし、芋虫なんだ。 「ところで、お嬢ちゃんはこんなとこで何をしてるんだい?」 そう聞かれてあたしは困った。 それは少し考えて言った一言だった。 「暇だったから…」 「ふぉふぉふぉ、暇だったからか…おもしろいお嬢ちゃんじゃ」 「ねぇ!そんなことよりシロウサギ知らない?」 その言葉を口にした瞬間、芋虫の顔つきが変わった。 「お嬢ちゃんまさか…シロウサギを追ってるのかい?」 「そうだけど?」 「お嬢ちゃん、あいつはやめといた方がいい」 「なんで?」 「あやつはのぉ…ゴホ…んんっ……いや、なんでもない」 「何よ!気になるじゃない」 「いや、なんでもないんじゃ」 「なによ!教えてくれてもいいじゃない」 「とにかく!シロウサギがどっち行ったのか教えて」 「そこまで言うなら仕方ない。あやつは確かあっちに行ったのぉ」 シロウサギの向かった方へ指を指す芋虫。
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