第7章:想像と創造

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あたしはここに来ても役に立てないの? せっかく、力があるのに… みんなの役に立ちたいのに… 「絶望してるのか?私に勝てないと悟って」 女王にそう言われて、あたしは何も言い返せなかった。 「今、楽にしてやる」 女王は再びアリスの力のカードをかざした。 すると、今度は宙に無数の刃物が現れた。 「さぁ、お終いだよ」 女王があたしに指を向けると無数の刃物はあたしに向けて飛んできた。 ダメ… 創造が間に合わない… やられる… そう思い、目を瞑った。 しかし、刃物があたしに刺さることはなかった。 あたしどうしたのだろうと思い、ゆっくりと目を開ける。 すると、目の前には刃物が刺さったチェシャ猫が倒れていた。 「チェシャ…猫?」 チェシャ猫は動かない。 あたしはだんだんと何が起きたのか把握していく。 「いや、チェシャ猫…いやぁぁぁぁ!!!!!」 部屋中にありすの悲鳴が響き渡った。 ありすは膝をつき、涙を流した。 倒れているチェシャ猫に触れようしたが、触れることはできなかった。 息をしていないのがわかったからだ。 「チェシャ猫…あたが…あたしのせいだ…」 そうだ! あたしには力があるじゃないか。 あたしは祈るような気持ちで、想像を創造へと変えて行く。 お願い、チェシャ猫…戻ってきて。 チェシャ猫が息を吹き返すイメージだ。 目を開けるイメージ。 チェシャ猫の傷が治るイメージ。 チェシャ猫…お願い戻ってきて。 しかし、チェシャ猫が目を開けることはなかった。 この力はすでに死んだ者を生きかえさせる力がないと知る。 あたしはゆっくりとチェシャ猫を抱きかかえる。 ごめんね…ごめんチェシャ猫。 力があってもあたしには、何もできない。 あたしは優しく、チェシャ猫を抱きしめた。 服にはチェシャ猫の赤い血がつく。
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