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「ふん、猫とのお別れは済んだかな?」
女王がそう言った。
あたしは、女王の声など耳には入らなかった。
「ふん、すぐにお前も猫のもとへ逝かせてやる」
そう言うと、女王は再びカードをかざした。
その瞬間、あたしの体が宙へと浮いた。
そのせいで、抱いていたチェシャ猫の体が床へと落ちる。
そして、宙に浮いたあたしの体は壁へと叩きつけられた。
背中に激しい痛みが走り、床へと崩れ落ちた。
けど、痛いはずなのにあたしは痛いと感じなかった。
体なんかよりも、心が痛かったからだ。
チェシャ猫を失った痛みの方が遥かに大きかったからだ。
その時、床に倒れるあたしの目の前にあるものが転がっていることに気づく。
あたしはそれを無意識に手に取っていた。
それは、あの一角獣から貰った角笛だった。
あたしは薄れゆく意識の中、その笛を吹いた。
しかし、音はでなかった。
「ふん、まだ息はあるようだね。ジョーカー、いつまで倒れているんだい?トドメをさしな」
「御意」
そう言うと、ジョーカーは立ち上がり、あたしに近づいてくる。
あたしの目の前に立つとジョーカーは剣を抜き、倒れているあたしに向けた。
そして、今まさにあたしに向けて剣を振り下ろそうとした時だった。
ジョーカーの苦しそうな声が聞こえた。
ゆっくりと、顔だけをあげるとジョーカーの胸を一角獣の角が貫いていた。
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