第1章:終わらない国へようこそ

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「あっちね、ありがと芋虫さん」 「…お嬢ちゃん」 「何?」 「名前はなんというんじゃ?」 「名前?相田美月」 「……美月…いい名じゃ」 「…芋虫さんの名前は?」 「儂か?儂には名なんてないよ。昔はあった気がするが…忘れてしもうたな、ふぉふぉ」 「名前を忘れたの?…じゃあ、あたしが新しい名前をつけてあげる」 「ふぉふぉ、それはありがたい」 「芋虫だから…オイモさんなんてどうかな?」 「オイモのぉ…ふぉふぉありがたくいただくとするかいのぉ、ふぉふぉ」 「気にいってくれた?」 「あぁ、もちろんじゃ」 「名前で呼んでもらえるなんて、どのくらいぶりかのぉ」 「喜んでくれたなら、よかった。じゃあ、あたし行くね」 その時、オイモは金髪の少女が美月と重なって見えた。 「アリス!」 「え?」 「いや、すまない…なんでもないんじゃ。アリスがこんなところにいるはずがないんじゃ」 「アリスってあのアリス?」 「美月。アリスを知ってるのか?」 「不思議の国のアリスでしょ?」 「不思議の…?そういえば遥か大昔この国はそう呼ばれていたこともあったような…」 「え?ここが…?今はなんて呼ばれてるの?」 「終わらない国…永久の国と呼ばれておるんじゃよ」 「永久の国…なんでそんなふうに呼ばれるようになったの?」 「それは…この国の時間が止まってるからなんだよ」 「時間が止まってる?」 「ああ、そうじゃ…」 「なんで、時間が止まってしまったの?」 「それはじゃな…いや、これ以上はよそう…」 「どうして?とっても気になるの。教えて、オイモさん」 「これ以上は教えられない…そういうきまりなのじゃ」 「きまりって…」
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