1始まりの調べ

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憧れている人が居て、その人を真似て後ろ髪を腰まで伸ばして、肩の辺りで一本に纏めている。 他の特徴といえば、蒼い瞳くらいだ。 親の遺伝なんだろうが、両親を知らない俺には確かめようがない。 俺は、物心つく前に捨てられていたらしく、今現在もお世話になっている飛燕家に拾われて養子になった。 今日のような雪の日に神社の境内に捨てられていたらしい。 俺のことはそんなところか。 「おい!凛桜!聞いてんのかよ!!」 「聞いてるよ。 そんなことより、早く飯でも食おうぜ。 寒すぎる」 「お前……人の気持ちも知らずにぃ…… この氷河期のように冷めきった心に温もりを求めて何が悪い!!」 「だったら、渋ってないで夏菜(なな)にガツンと一言言えば済むことだろ」 俺がそう言うと、うぐぅと言って清太は黙ってしまった。 夏菜は、俺達の幼なじみで今日は予定があるそうで居ないが、実は清太と両思いなんだ。 互いのことを知りすぎているが故に、どちらからも声をかけられないらしい。 ちなみに、清太も夏菜も、互いに両思いだということは知らない。 俺も教えるつもりはない。 ぶっちゃけ、その二人がモジモジしているのが面白いってだけなんだけどな(笑) たまに二人から相談も受けたりする。 適当に話を聞く程度だけど。 「お、ここなんかいいんじゃないか? まだ入ったことないし」 俺が通りを眺めていると、なかなかこじゃれた喫茶店を見つけた。 「あぁー、もうなんでもいいや。 早いとこ入ろうや」 随分と投げやりな発言だな。 まあ、別にかまわないけどな。 喫茶店の前に立ち、ドアを開くとカランカランと古くさい音をたててベルが鳴る。 店内に足を踏み入れると、カウンターに女性の店員がいた。 内装は年季が入っているようで、逆にそこが味を出しているように感じる。 「いらっしゃいま……あ…… 清太に凛桜」 「あれ、夏菜? そうか、バイトしてるって言ってたけどここだったのか」
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