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溜め息混じりにそうぼやく。
隣では聞こえてなかったようで、清太と夏菜が楽しそうに会話を続けている。
実際、仕事に就くなら給料は高いほうがいいと思うし、それだったら大学に進学して仕事の幅を広くできればいいとも思うし……考え始めたらキリがないな。
……それに、今考えるようなことでもないか、一人の時にでも考えるとするか。
「お?どうした?
妙に辛気臭い顔して」
黙りこくっている俺を心配するかのように、清太が話しかけてくる。
そうか、表情に出るほど深く考えてしまっていたか。
「いや、なんでもない」
「珍しいね。
凛桜がそんなに考え込むなんて。
らしくないよ?」
はいどうぞ、と最後に加え、夏菜はアイスコーヒーの注がれたグラスを俺の前に置いた。
「失礼だな。
隣のアホよりは百倍考えて暮らしているぞ」
「人のこと何も考えてない能天気みたいな言い方すんじゃねぇ!!」
「アホの清太君が何か言ってるようだが気にしない」
「心の声が出てるじゃねぇか!!」
楽しいな。
素直にそう思う。
こうやって下らない会話を続けているうちに、料理が出来たようだ。
「はい、おまちどおさま。
ナポリタンとオムライスね」
皿には、出来立てであることを主張するかのように湯気がたちのぼり、食欲をそそる香りが、鼻の奥をくすぐる。
「うまそー!
いっただっきまーす!」
運ばれてくる料理をみるやいなや、清太は早速フォークを手に取り、ナポリタンを掻き込む。
俺も腹の虫が鳴きそうになっていたので、いただきますと言って、オムライスを頬張る。
「んまーい!
夏菜!これめっちゃうまい!」
「確かに。
オムライスも、卵のトロトロ感が絶妙だ」
「ふふん♪ありがとう。
そう言ってくれると、作った甲斐があるわ」
各々の感想を述べると、夏菜は嬉しそうにこちらに微笑む。
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