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別に、鼻にかけて言うわけではないが、俺の父親はあるIT企業の社長で、母がその秘書をやっている。
父も母も家にいることが比較的少なく、俺と弟が居るだけということもよくある。
ああ、弟と両親はちゃんと血は繋がっている。
名前は、飛燕修人(ひえんしゅうと)。
年は俺より六つ下で、今は中学受験のために猛勉強している。
修人も修人で、幼なじみの友達がいるため、家以外で顔を合わせることはあんまりない。
たまに、清太と遊ぶ時に着いて来たりはするが。
話が逸れてしまったな。
まあ、親が社長だから家は裕福だし、なに不自由ない生活を送れているが、生活費は無理だとしても自分のお小遣いくらいは自分で稼ぎたいんだ。
何も気にする必要はないと言われているが、せめてそれくらいはやりたいんだ。
「お前ってさ、ほんとしっかりしてるよな」
清太が感慨深そうにそう呟くと、夏菜もほんとだよね、と相づちをうつ。
「自分で出来ることは自分でやる、それがモットーなだけだ。
じゃあな、夏菜、また食べに来るよ」
「うまかったぜ。
バイト頑張れよ!」
「うん!ありがとう!
ほんとならもうとっくに上がりの時間なんだけど、店長がまだ買いだしから帰ってこないから……」
そういえば気になっていたが、店員が夏菜しか居ないのは店長が買い出しに行っていたせいか。
2時間近く居たのにも関わらず、誰も客が来ないのも不思議だがな。
「まあ、店長なんだからそのうち帰って来るだろ。
すぐに帰れるように片付けでもしとけって」
「それもそうね……
わかった、そうするね!
週末のスキー、予定が決まったら連絡してね!」
「ああ、分かった。
またな」
そう最後に言って、俺と清太は店を後にした。
外に出ると、まだ人通りは多く、賑やかな声が辺りから聞こえてくる。
これぐらいの時間になると、歩いている人達もカップルから仕事帰りのサラリーマンへと変わってきていて、さっきとは違った賑わいを見せている。
「さてと、どうする?どこか行くか?
それとも帰るか?」
俺がそう提案すると、清太は、そうだなー、と悩む素振りを見せる。
今日は、両親にも帰りが遅くなることは言ってあるし、何時に帰ろうと問題ない。
「そうだ、最近行ってないから裏通りのゲーム屋に行こうぜ。
欲しいやつがあるんだ」
「分かった。
じゃあ行くか」
「近道しようぜ。
そこの路地から行けるから」
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