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「ま、これから死ぬ人に言ってもしょうがないか」
ギャハハハ、と鉄を引っ掻くような耳障りな声で笑う。
「それじゃ、僕は他の人も殺さなきゃだから。
キミにはもう死んでもらうね」
何百と言う鉄骨、コンテナ、影で形成された剣が光輝を取り囲む。
異様なほど禍々しく、鈍く光っている。
確実に命を刈り取られるような、形容しがたい恐ろしさに満ちている。
少年はゆっくりと、命を刈り取ることを楽しむように手を振り上げる。
「それじゃ、バイバイ」
口が裂けてしまいそうなほどに口角を上げ、笑う。
ゆっくりと振り上げた手を勢い良く降り下ろす。
全ての凶器が光輝を貫き命を喰らうために動く。
一切体を動かせない中、無数の凶器が迫ってくる。
光輝は確信する。
ああ、自分はここで死ぬのだと。
周りに浮かぶ凶器が体を貫けば、強烈な痛みに襲われるだろう。
痛みに耐えるために目を瞑る。
本気で死を覚悟した光輝だったが、彼女に死が訪れることはなかった。
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