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優しく、柔らかく、頭に誰かの手が触れた。
その直後、光輝を不思議な浮遊感を襲った。
光輝が固く閉じた目を開くより先に、銃声が鳴り響く。
嫌な予感が光輝の中を駆け巡る。
今まで二度経験した、大切な人を失うおぞましい感覚。
そんなことはない、そんなことはあり得ないと信じているが、恐ろしい。
目を開けたくない。
目を開けて先を見たくない。
恐怖が心の中で渦巻く。
抵抗するかのように重い瞼を、ゆっくり、ゆっくりと開く。
「流...弥...」
自分の声とは思えない、音としか捉えられない声が漏れる。
眉間に風穴が空き、既に事切れている少年が地面に落ちている。
それはいい、問題はそれより目の前に広がる光景だ。
先程までいなかった流弥が地面に転がっている。
血が、肉が、辺りに撒き散らされ、おぞましい池を作っている。
自分を襲っていたはずの何十と言う鉄骨が流弥体を貫き、地面に縫い付けている。
手や足、肩や太股、あらゆる部位をコンテナに潰され、体のほとんどは原型を留めていない。
コヒュッコヒュッ、と掠れた音が流弥から漏れる。
呼吸はしているようだが、明らかに虫の息だ。
見た光景が信じられない。
自分の目で見た筈なのに信じることが出来ない、信じたくない。
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