理不尽こそ神様

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「スゴいね、キミ頭良いよ。 いやはや、流石僕が選んだ人間だ」 「どうも。 だがこんなもの、一つ一つ事実を観察、確認して結論を出しただけだ。 褒められるほどのことじゃない」 謙遜とも取れるような言い方だが、流弥は謙遜していると言うより当然のことを述べているかのような声で、淡々と言う。 「いやいや、事実を確認してしっかりとした結論を出すのは素晴らしいことだよ。 自分の状況を的確に分析するっていうのは出来そうに思えてそうそう出来ることじゃない。 よってキミは素晴らしい」 胡散臭いほどに褒め称える神(仮)を見て、流弥は眉をひそめる。 どうにも変な感じがする、こいつは一体何がしたいのだろうか。 褒めるためだけに自分を殺し、ここに呼んだのだろうか。 いや、そんな筈はない。 いくらこんな変態でも暇では無いはずだ。 どうにも明確な結論見当たらず、苛立ちが募ってしまう。 不覚にも、そのことが顔に出てしまっていたのだろう。 「そんなイライラしないでよ。 別にキミにとって損な話をするわけじゃないんだから」 「どう言うことだ?」 自分の内心を見破られてしまったことにより苛立ちが高まる。 もう別に隠さなくても良いか、と思い、露骨に不機嫌な顔をする。 が、不思議と声は平坦なままだ。 「キミには、異世界へと転生してもらいたいんだ」 「転生?」 聞き慣れない単語に、流弥の頭に疑問符が浮かぶ。 「あーー、ほら、簡単に言うと、携帯小説とかで良くあるチートになってファンタジー世界で生まれ変わる、みたいな奴」 「みたいな、とか言われてもな。 意味が分からない」 「ええー、分かってよー」 「分からない物は分からない」 基本的に訓練をするか、任務で世界中を飛び回っていた流弥は、娯楽とは無縁の存在だった。 携帯小説どころか小説も読んだことがない。 活字を見るのは報告書の中か資料、専門書だけだ。 そんな流弥が携帯小説の中の話、ましてやファンタジーの話など知るはずもない。 「使えない。 私が説明するので退いてください」 「うわ、ちょっ、トリアナ、やめっ、あーーーーー」 トリアナの鞭が唸りをあげ、神(仮)の足を掴んだと思った瞬間、神(仮)が鞭ごと投げ捨てられた 。 湯気が立ち上る熱湯の中へと。
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