プロローグ

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遮るものが一切無く、風の通り道となっている屋上は寒い。 いくら寒いのが好きだからと言っても、11月に長Tシャツ一枚と言う軽装備は、流石に無理があったかもしれないと流弥は軽く後悔する。 隣の少女も寒い寒いと連呼しながら縮こまっている。 上着でも持っていれば少女に着せてあげられたのに、とこれまた後悔する。 が、後悔したところで何かが変わるわけではないから仕方がないと割り切り、少女を自分に引き寄せてくっつく。 「わぁお、意外と大胆なことするね」 少女が茶化すように流弥に笑い掛ける。 流弥も笑いながら返す。 「俺はいつでも大胆だろ?」 「あはははは、よ~く言うよ。 いつもムスッとしてる癖に~」 少女が笑いながら流弥の頬をつつく。 つつかれる度に流弥の眉間に皺が寄る。 「別に意識してこんな顔してる訳じゃない」 「それもそうだよね。 ちょっと無神経だった、ごめんね」 「良いさ。 俺の問題だ、楓には関係ない」 この言葉に少女ーーー楓はムッとした表情をする。 「その言い方はないんじゃないかな。 私はいつも流弥の隣にいるんだよ、今も、これからも。 それはつまり一心同体と言うことでもあるんだよ」 少女の表情が怒りから柔らかい笑みに変わる。 「流弥の悲しみ、怒り、喜び、私の悲しみ、怒り、喜び。 全部二人で分かち合っていくんだよ。 だから、自分一人の問題だなんて言わないで、ね」 「分かった、俺が悪かった」 両手を挙げ降参をポーズで表した後、そのまま楓の頭に乗せて撫でる。 「撫でれば許させると思ってるのかな?」 「間違ってるのか?」 「間違ってないけどさ」   二人して声を上げて笑う。 その姿はお互いの未来がどこまでも続いていることを信じているもので、幸せに満ちていた。 一頻り笑った後、二人とも黙った。 辺りを沈黙が支配するが、その沈黙には気まずさなどない。 寧ろその沈黙が心地好い。 互いが互いに寄りかかり、互いが互いを受け止める。 始めの内感じていた寒さなど、隣から感じる温かさでどこかへと飛んでいた。
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