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グラは色々なことを話してくれた。この世界が俗にアルトニアと呼ばれていること。この周辺の地理のこと。この国は比較的平和だが、遠くの国ヴィルノアの国王が数年前から急に力をつけ、最近になってその国王の周りに黒い噂が流れていること。中でも一番衝撃的だったのは…
「昔も世界の各地で異世界から来たって言う人が現れ、一時世界が混乱したんじゃ。で、ヴィルノアの国王はその人達を邪教の徒として処刑を始めた」
「しょ、処刑!?」
「だからこの世界では異世界から来た事を言うのは控えた方がいいんじゃよ。そしてルト君が元の世界に戻る方法も、残念ながらわしには分からん。もしかしたら、そんな方法はないのかもしれん」
グラは優しく、静かにそう語った。
「そうなん…ですか」
「それを聞いた上で、君はどうしたいかね?」
「俺は…やっぱり元の世界に戻りたいです。だから、なんとかして帰る方法を探したいです」
ルトがそう言うと、グラは深刻そうな顔を優しい顔に戻して言った。
「そうか。わしもそれがいいと思っておる。この世界は広い。だから、探せばきっと元の世界に帰る方法も見つかると思うんじゃよ。そして… その旅に、ミオも連れて行って欲しいんじゃ」
突然出た少女の名前に、ルトは驚きの表情を浮かべる。
「実はな。ミオはお主と同じ、元は異世界から来たんじゃよ」
「俺と…同じ?」
ここでルトはようやく気付いた。昨日グラが言っていたことを。
「あの子はこの村で帰る方法を探すうちに、わしらの本当の家族みたいになってしまっての。わしもアルマもそれが嬉しくて、ついあの子の優しさに甘えてしまったんじゃ。しかし、やはりわしは元の世界に戻るのがあの子の本当の幸せだと思うんじゃ」
「おじいちゃん…」
不意に後ろから声が聞こえ、ルトが振り向くとそこにはミオが立っていた。
「ふむ、聞いておったなら話は早いな。ルト君と一緒に帰る方法を探してみんかね?」
ミオは「少し考えます」と言って、部屋から出て行った。
「なに、大丈夫じゃよ。ミオはきっとルト君と一緒に行くことを選ぶからの。午後には用意も出来ているじゃろう。少し村の中を見ていくといい」
そう言ったグラの表情は、ルトには少し寂しそうに見えた。
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