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「あの……大丈夫ですよね?」
浅井さんが心配そうな目で見てくれている。こんなに他人のことを心配してくれるなんて絶滅危惧種だと思ってたよ。人間の大半は事なかれ主義だと思うからね。もちろん僕も含めて。
「もちろん俺もそうだぞ。めんどくさいことは嫌いだがこれも仕事だ。傷口は塞がり切っていねえが少し落ち着いたな。完全下校時刻の6時まで寝てろ。6時になったら出てけ。いいな?」
そういうと彼は保健室から出て行ってしまった。嵐のような人だったな。
保健室にはまたも浅井さんと二人。
ここで僕はさっきの質問の続きを引っ張り出すことにした。黙ってたりしたらまたテンパりかねないからな。
「二つ目の質問いい?」
「あ、大丈夫ですけどそのまえにあなたの名前、教えてくれませんか?」
そうだね。相手に名乗らせておいて自分は名乗らないなんて卑怯だもんな。
「真田雄太。2年Dクラス所属」
「真田さんですか。私は2年のAクラスです。お願いしますね」
笑顔でそういう彼女の顔はまさにこの学園の男子生徒を虜にするようなそれはそれはすばらしい笑みだった。でも僕は残念ながらあまり興味はないのだ。心に決めた人がいるので浮気はしない。あ、これ山本いる前で思わなくて良かったー。
「で二つ目の質問ってなんですか?」
おっと忘れてたそれが本題だった。
「さっき君は僕に選挙を手伝ってほしいとか言ってたけど理由をいいかな?」
これが最大の謎です。今日初対面で危うく殺されかけ恥ずかしいセリフを二回も――二回目は勘違いしてくれたみたいだが――言った相手の選挙を手伝う意味が良くつかめないのだ。そんな僕の問いに対して彼女はまた長く果てしなく話すのかと思った。
しかしそれはいい意味で外れることとなった。いや、悪い意味かもしれないけど。
「あの私!……あなたのこと……」
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