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「憧れてるんです!」
彼女はそう言った。
告白とかそういうムードとか全部突っぱねて彼女は僕に、憧れている。と言った。
「えーっと。それはどういう意味で?」
いまいち、と言うかまったく飲み込めてない俺はさらに説明を求める。
「まず、最初も言いましたけどとっても優しいじゃないですか。それに先生にも普通に喋れるじゃないですか。私は喋るの苦手なんです。口下手で。でもあなたにはなんかこう、喋りやすいって言うか。喋りやすい雰囲気を作り出してくれるんですよ!だからあなたにあこがれました!あなたとなら生徒会選挙も受かれるかもって思って。で頼んでみたんです」
うーんと整理するとまずこの子、浅井さんは実は口下手。でも、僕といると不思議と喋れる。でもって俺が優しい。だから一緒に生徒会選挙戦ってくれと。
うん、なかなか難しいですね。人の意思を理解するのって難しい。定期テストが簡単に思えてきます。
「えっと、結論から言っていい?」
僕はとりあえずの収集をつけることにした。
「はい」
「まず君が僕のこと優しいとか、喋りやすいとか褒めてくれたのはうれしいよ。ありがとう。でも僕は選挙のことなんか何も知らないし僕が一緒に戦ったからって受かる訳でもないよ」
「でもいいんです!一緒に――」
「無理」
これは自分でも中々非情な奴だと思った。ここまで心配してくれた相手に突きつける現実。僕の脳内会議では相手への言葉も選べないようだ。
「あ、まあ、ごめん。ようは僕より適任なんかいくらでもいるってことだよ」
事実そうだと思う。これはホントに率直な気持ちだもんなあ。僕なんかがやるとかえって迷惑にしかならなそうだし。
「……分かりました」
浅井さんは1言そう呟く。悲しいけどこれって現実なのよねえ。
これで僕の平凡な1日は守られユートピアに囲まれた日々が続くかに思われた。
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