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しかし、どうしてか神様は僕をそう簡単に楽園へは招待してくれず。むしろ地獄へ突き落す気満々なようで。
「分かりました。あんまり使いたくない手でしたけど脅迫させてもらいますよ?真面目に私の選挙活動やってくれないと今日会った出来事を私が着色して学校に広めます」
神様……ばかやろう。
この女の子は可愛い顔してずいぶん鬼畜なようです。え?冷静じゃないかって?バカを言わないでください。背中の冷や汗が半端ないです。
そう、彼女は間違いなく脅迫と言った。聞き間違えることはなくどうしてこうなったかと聞きたい。
今日会ったことを着色して広めます
僕の脳内会議はまたも熾烈を極め始めた。
そして目に浮かぶのは彼女が今日の出来事に着色したストーリー
この人階段で私にいきなり触ってきたんです!
突き落して頭を打って尚、私にセクハラしようとしたんですよ!
保健室に連れ込まれて私もうどうしたらいいか分からなくって!
あの人最低なんです!
うわああああああああああああああああああああああああああああああ。
だめだ!絶対だめだ!これはダメすぎる!
ただのおとぼけ不思議系マシンガントーク女子かと思ったらなかなか取引上手な人です。
ああ女子怖い恐い。
さてどうしたものか。僕が思いつく選択肢は二つ。
一、だが反抗する。どうしてもやらない。めんどくさいからパスする。おそらく変態の異名は僕が欲しいままにするだろう。
二、従って選挙活動を手伝う。めんどくさいしちょっとごまかせばどうにでもなるからこれがベストな気がするな
うん、二番を可決。
「……分かった」
僕がそういうと彼女はぱあっと笑った。その笑顔もさっきの脅迫の後だと霞んで見える。
「話が通じる人でよかったです。じゃあ、明日の朝から6時に学校に来てくださいね!」
「……え?ごめん耳が腐ったみたい。何時に来いって言ったの?」
「いや、6時ですよ?朝の選挙活動は基本です!来るべき選挙当日の2週間後に向けて毎日朝6時に来ましょう!」
前途多難。八方ふさがり。一騎当千。とんだ日にいる夏の虫。どんな言葉で形容したらいいか分からないくらい僕は絶望した。ああ、どう転んでも地獄なんですね。
「遅れたら……まあ、分かりますよね?」
そういった彼女の笑顔を僕は片時も忘れなかった。
主に恐怖の意味で。
こうして僕と彼女の選挙13日戦争が始まるのだった。
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