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そんな僕はとりあえずお腹を膨らまそうと思って肉まんの袋をとる。4月なのに肉まんを置いてくれているコンビニに感謝です。
食べようと思い口に運んだその時彼女はまたも突然現れた。
「おそくなってすいませーん!」
トコトコとかけてくる彼女。制服の上からコートを着ている。そんな彼女の姿を見るとイライラが収まって――いきません。朝はご機嫌ナナメなんです。
「遅いです。5時30分って言ったじゃないですか。20分も遅刻ですよ。こんな寒い中で待たせないでくださいよ」
ほんとは僕も15分遅かったのだが。自分なりの嫌味を言った後、彼女はアワアワしながら謝罪を始めた。
「いやっ、あの、ごめんなさい!私、朝起きるの苦手なんですよね。ヘヘヘ」
あら可愛い。こんな彼女を見てるとイライラが――ええ、やっぱり収まりません。朝早いの嫌いなら朝からやるなよ。
「でもすごいですね。さな君は朝早くても平気なんですね。良かったです」
彼女はそう言ってほほ笑んだ。その笑顔を見てると癒されますね。イライラはようやく引っ込み始め――なかったです。てかこの人さっき僕のことさな君とか言わなかった?
「あのー、今なんて言った?」
「朝早くても平気なんですねって……」
「その前」
「さな君……」
「ちょっと待って。さな君て俺のこと?」
会って2日であだ名を付けられました。すごいフレンドリーな人なんですね。でも
「その呼び方やめてください。真田君でも真田さんでもいいですからさな君て呼ぶのだけはよしてください」
さな君て呼ばれるのはよくあることで親戚からは『さな君』って呼ばれてる。でも僕はこのあだ名が嫌いだ。なんか子供っぽいし。それに僕の一番苦手とする人が一番初めに呼び始めたからだ。
「えー、いやですよぅ。さな君でいいじゃないですか。さな君、さな君、さなくぅーん」
ああ、もうめんどくさいや。朝のやる気の出無さはいつもの10分の1。それくらいやる気が出ない。まあいつももそんなやる気出てるわけじゃないんだけど。
僕は半ばあきらめ気を取り直して肉まんを口へ運ぶ。
ああ、この寒さに耐えてきた体に絶好のご褒美ともいえよう。空腹と寒さによって肉まんはいつもの10倍美味しく感じた。
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