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「怪しいものではありません。僕は今度選挙で戦わせて頂く浅井市夜の責任者です。選挙の挨拶にやってまいりました。どうぞ選挙ではお手柔らかにお願いします」
僕は精いっぱいの営業スマイルを振りまわしてそう言った。さあ、彼女の反応は……
「ああぁ!市夜さんのところの責任者の方ですか。これはこちらから挨拶に行かずに失礼しました。そちらから出向いていただけるなんてわざわざすいません」
意外と礼儀正しい人のようだ。きれいな人は高飛車な人が多いかと思っていたけれど偏見だったようだ。ハサミはすごく気になるけど。
顔はすごい。背も高い。スタイルも抜群。髪は茶髪でロングヘアー。二年生。北条。怜。ん?北条?聞いたことあるような無いような。
まあ、いいや。今は仕事のほうを優先しよう。
「こちらこそ。突然押しかけて申し訳ありません。で、どうですか?活動は順調ですか?」
それとなく問う。返答が楽しみだなぁー。
「活動?ああ、選挙活動ですか?まあまあですかね。それほど人が集まってるわけではないですかね。今私の支援者のみなさんは頑張って票集めに出てるんです。私は出なくていいと言われたんですがじっとしてるのもなんか嫌なので玄関で活動中というわけです」
うっわあ、すっげえ良い子。正確な数は把握できないが信頼度は高いようだ。
「ふむふむ。具体的にはどれくらい数が?」
「そうですねえ。ざっと20人くらいで――」
「おじょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
叫び声。彼女が自分の派閥人数を告白した瞬間、玄関に響き渡った。
「な、なんだ?」
「あ、さな君!右!危ない!」
右を向くと一人の男子生徒が宙に浮いていた。いや実際に浮いているわけではなく僕にとび蹴りをかまそうとしているところだったのだ。
中庭から走ってきた彼は叫び声とともに僕にとび蹴りを放ったから僕のするべき行動はただ一つ(ここまでの思考0.2秒)
「――避けるっ」
「のわっ!」
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