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ポケットの中から小型の時計を取り出し、現在の時間を確認する。
時刻は深夜0時過ぎ、暗闇の街の中を、月明かりと街灯だけが照らしている。
静かな夜だ、吹き抜けていく風の音以外聴こえない程に。
「頃合い……か」
呟き、時計をポケットに戻して立ち上がる。
因みに俺が今まで座っていた場所は、今回のターゲットの視認が出来て、街の様子も一望できる建物の屋根の上だ。
「――風衣」
俺は短い詠唱と同時に建物から飛び降りた。
身体の回りを風が包み込み、落下の速度が急激に衰える。
そしてそのまま、ゆっくりと地面に着地した。
このように五階建ての建物の上からの飛び降りも、魔術を使えば難なく行える。
初級の魔術ですら、普通の人間には出来ない事が可能になるのだ。
故に、魔術の素養の有無で、人の優劣が決定される。
そんな世界なのだ。
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