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「我が校は学業に励む生徒は報われて、より高い学力をつけられるシステムをとっています。」
と校長は言い、刃平をみて
「頑張りたまえよ、人生の成功者になる道はここにある。」
と言い、ウインクした。
刃平の背中に寒いモノが走った。
(このおじさん、ロマンスグレー気取りか!?)
ドアにノックがあり、うつむきがちで顔がよく見えない地味な印象の女性が入ってきた。
丸顔で30歳くらいのようだ。肉付きがよく、太ってはいないが胸や腰が張っている。
「お邪魔します。」
声も小さい。
校長が、刃平に
「山田タク君、だったね、こちらの百木先生に、ザッと校内を案内してもらいなさい。
私はお姉さんと、手続きの話しがまだ、ある。」
瀬織が目で、
(よし、行け。よく見てこいよ!)
と刃平に合図した。
刃平は立ち上がって、
「百木先生、よろしく。」
と挨拶し、部屋を出た。
部屋を出ると百木の雰囲気がかなり変わった。
顔が上がり、童顔なのが見えた。
おだやかで優しい顔立ちで、化粧っ気はないがかわいらしい。
最初の印象よりずっと若く見える。
声もやや大きくなった。
「山田くんは前の学校では、なにか部活してたの?」
と、きいてきた。
「はい、アニメ同好会です。」
答えながら刃平は苦笑いした。
(という設定になってるんだから、我慢だ。まあオタクだし。)
「部活もさかんだから何かするといいよ。
一学年6クラスあるから、700人以上の生徒がいるんだけど、そのうち500人は何かの部活をしてるよ。」
二人は三階から二階に降りた。
コンピューター室、と書かれた教室がずらっと三つある。
百木は
「ここが自慢のパソコン教室。120台のパソコンがあるよ。」
と説明した。
刃平は感心してみせた。
「へええすごいや、さすが私立ですね。」
奥のコンピューター室から人の声がする。
百木が
「あ、忘れてた!ちょっと待ってて、先生忘れたことがあった。」
小走りに去っていく。
山田タクこと刃平は、その場に残された。
「何だかなあ。ん?」
コンピューター室から聞こえる声は授業によるものではなさそうだ。
刃平は部屋のドアに近寄り、耳をドアに近づけた。
よく聞こえないが、3~4人の声だ。
その時、チャイムが鳴った。授業が終わりになったようだ。
廊下に人が通行し始める。
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